昔の話

腕を捥いだら羽が生える-20180406

 

腕を捥いだら羽が生える。

座右の銘というには少し歪な響きだけど、いつからかこんな言葉を胸の内に抱えている。

誰かに言われた言葉かもしれないし、どこかで読んだ言葉かもしれないけども、ずいぶん前からずっとある。

「いいからその腕を捥げ。」

 

−−−−−

 

一番好きだったのは、大学の頃に付き合った女の子だった。

2年半。人生の中でそれほど長い時間を共にしたわけではないけど、一番好きだったのは多分その子だ。

もう彼女は結婚してしまったし、僕もその後たくさんの恋をしたけど、今でも時々その子のことを思い出す。

「最後まで、木津くんのことが全然わからなかった。」

自分の一言でこれほど人を悲しませられるのかと驚くほど、彼女は泣いた。

別れを告げたのは僕の方だ。

 

−−−−−

 

「お前舐めてんのか。」

新卒で入社した会社の上司は、決して高圧的な人ではなかった。

だからあの時僕に向けられた言葉は、理性ではなく感情によって選択された言葉なのだと思う。

考えてみれば当然だ。

大して仕事ができるわけでもない部下の退職理由が「一度辞めてみようと思いました。」であるなら、誰だって不愉快な気持ちになるのだろう。

血迷ったと、思われたかもしれない。今でも申し訳ないことをしたなと思う。

それでも、衝動に勝てなかった。

 

−−−−−

 

腕を捥ぐというのは、もちろん比喩だ。

その時自分が一番大事にしているもの、あるいは自分が一番依存しているものを、切り離すこと。

腕を捥いだら羽が生える。

それまでの自分には想像もできなかった、新しい選択肢が生まれる。

もちろん血はドクドクと流れるし、羽だって生えないかもしれない。

でも、そこで死ぬならそれまでだ。

 

−−−−−

 

「いいからその腕を捥げ」

相変わらず、僕は衝動に勝てない。

腕を捥いだ直後、血液が体内を猛スピードで巡るその振動が、病みつきになっている。

 

終わりに

 

以上です。

振り返り時の参照用に、昔別の媒体で書いた記事をコピペしています。

これは、僕が大学を出てから2社目の会社(厳密には設計事務所)を退職して、住んでいたシェアハウス『モテアマス三軒茶屋』を出た翌日に書いた記事です。「こんなん書いたらもう就職できないだろ」と思いつつ、衝動で書きました。

また来てね!